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寺山修司の「見せ方」


寺山修司は1935年生まれ。1983年没。今年で生誕80年。
TERAYAMA WORLDの名義で、さまざまなイベントが企画されています。
以前は三沢市寺山修司記念館名誉館長をはじめ、代表は故・九篠今日子氏(2014年没)が務めていました。 http://www.terayamaworld.com/

短歌・俳句・詩・随筆・評論・戯作・作詞など多岐にわたる文筆活動に加え、 映画監督・写真家としても活動、競馬にも造詣が深い・・・と、活動が多岐にわたり、 「若者のカリスマ」として一世を風靡したという、非常に影響力の強い表現者です。

一見ばらばらな個々の活動が、どこか結びついている様子は、 寺山修司というコンテンツがメディアミックス展開されているようでもあります。

一例として、漫画・アニメ「あしたのジョー」に関するエピソードです。

1970年、主人公のライバル力石徹が作中死亡した際、現実世界で「葬儀」が行われました。ファンイベント的な要素も強かったとも言われていますが、この際の葬儀委員長が寺山であり、呼びかけ人の一人も寺山です。ほぼ同時期にスタートするアニメ版第一期のオープニングテーマは寺山の作詞によるものです。

作品自体の影響力の大きさや、当時の宣伝戦略の動きの一環とも考えられますが、現実・紙面・テレビという三層かつ虚実のはざまのなかで「寺山修司」という存在が浮かび上がるギミックを本人が仕掛けたようにも見えて興味深い事例と考えています。

また、今日ではコンテンツを多角的・多面的に発信していくという姿勢は一般的となりましたが、受信者側の受け入れ方として、売り方の戦略としてのあざとさを含めて、「神輿は担いだほうが楽しい」という、その「楽しみ方」のきっかけを作ったとも考えられます。

創作活動自体も、テーマそのものに対し、多層的多面的に描いていく手法を好んでいるかもしれません。「カウボーイポップ」も、さまざまな要素のなかから寺山の「愛」というテーマが浮かんでくるようなギミックが仕掛けられているかもしれません。



by 小池 2015/06/10 


無伴奏男声合唱のための「カウボーイ・ポップ」より 4.ある日 5.ヒスイ
作詞:寺山修司  作曲:信長貴富  演奏:益楽男グリークラブ





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