HomeArchive研究コラム > 千原英喜の「本歌取り」の作曲スタイル

千原英喜の「本歌取り」の作曲スタイル


本歌取(ほんかどり)とは、歌学における和歌の作成技法の1 つで、有名な古歌(本歌)の1句もしくは2 句を自作に取り入れて作歌を行う方法です。技法としてはいくつかのルールがありますが、ここでは割愛します。

主に本歌を背景として用いることで「奥行きを与えて表現効果の重層化を図る」際に用いるとされています。

転じて、現代でも絵画や音楽などの芸術作品で、オリジナル作品へのリスペクトから、意識的にそのモチーフを取り入れたものをこう呼びます。 オリジナルの存在と、それに対する敬意をあきらかにし、その上で独自の趣向をこらしている点が、単なるコピーとは異なるとされています。 オマージュ/インスパイア(される)等々のという言葉にも言い換えれば、一般的に使用されているとも言えます。

千原英喜は「どちりなきりしたん」楽譜まえがき、巻末の本人解説などにおいても、使用している聖歌の出典を明らかにしたうえで、楽曲のねらいや演奏上の注意などを記載しています。

表現効果の重層化、という前述の言葉を借りれば、ラテン語テキストの聖歌によるヨーロッパのキリスト教の思想背景と、日本語テキストによる「日本に受け入れられた形式のキリスト教」という二層構造を設定し、そこに作曲者の言うところの「架空のキリシタン信仰世界」を描いていると言えます。

by 小池 2015/01/28 



 




inserted by FC2 system