『サカラメンタ提要 Manuale ad Sacramenta』について
■ 正式名:
「教会の秘跡※を執行するための手引き。日本司教ドン・ルイス・セルケイラがその配下の聖職者のために作成した。」
「教会の秘跡※を執行するための手引き。日本司教ドン・ルイス・セルケイラがその配下の聖職者のために作成した。」
■ 出版年・出版地:
1605年(慶長10年)、長崎のコレジオ (イエズス会の高等教育機関)にて。
1605年(慶長10年)、長崎のコレジオ (イエズス会の高等教育機関)にて。
■ 概要:
キリスト教の儀式を執り行うためのハンドブックであり、それ以前に同じタイトルで出版されたスペイン版(1585)やメキシコ版(1560)、イタリア版などを参照しつつ、日本の文化・習俗を考慮したうえで独自に編纂された。大部分がラテン語で書かれ、ポルトガル語とローマ字表記の日本語が散見される。日本初の@カトリック典礼書、A二色刷活字印刷:黒(式文)と朱(説明文)のインクを使用、B西洋式楽譜印刷本でもある。
キリスト教の儀式を執り行うためのハンドブックであり、それ以前に同じタイトルで出版されたスペイン版(1585)やメキシコ版(1560)、イタリア版などを参照しつつ、日本の文化・習俗を考慮したうえで独自に編纂された。大部分がラテン語で書かれ、ポルトガル語とローマ字表記の日本語が散見される。日本初の@カトリック典礼書、A二色刷活字印刷:黒(式文)と朱(説明文)のインクを使用、B西洋式楽譜印刷本でもある。
■ 構成:
【序】18頁。前書き、典礼暦など。
【本文】414頁。
【付録】33頁。本文の要点を日本語(ローマ字表記)で述べたもの。
【序】18頁。前書き、典礼暦など。
【本文】414頁。
[第1部]1-192頁。日本在住の司祭たちが普段必要とする5つの秘跡(堅信と叙階を除く)の説明と執行方法。
[第2部]192-414頁。死に臨む者に対する助けと勧告、葬儀、種々の祝福などの祈りや儀式への指針。楽譜。
【索引】【付録】33頁。本文の要点を日本語(ローマ字表記)で述べたもの。
■ 楽譜:
【本文】第2部にグレゴリオ聖歌の楽譜(五線が赤、音符が黒のネウマ譜)が19曲収められている。そのうち13曲が〈死者のため、とくに埋葬のためのもの〉、他の6曲は〈高位聖職者の教会訪問のためのもの〉で、すべて単旋律のラテン語聖歌である。
用途が特殊であり、音楽的にも複雑な形をとる曲が多いので、一般の信徒が日常口ずさめるような歌ではなかった(正直、面白い曲ではない)。専門的な訓練を受けた聖職者ないし聖歌隊、神学生によって歌われた。ただし、「Tantum ergo Sacramentum」と「Veni Creator Spritus」の二曲は例外で、単純な旋律を、歌詞を変えて複数回歌うものだった。それゆえ日本の一般信徒たちによっても広く歌われた。
さらに、これら19曲の旋律は現代の聖歌集に見られないものが多く、16‐17世紀のスペインやポルトガルでのみ歌われたローカルな聖歌だったらしい。
最後に、『サカラメンタ提要』は、日本の西洋音楽の受容が、明治開国期ではなく、室町時代末からのいわゆる〈キリシタンの世紀〉(1549-1650:ザビエルの来日からポルトガル国王ジョアン4世が幕府から最後の文書を受領するまでの期間。西洋における初期近代)だったことを示すものでもある。
【本文】第2部にグレゴリオ聖歌の楽譜(五線が赤、音符が黒のネウマ譜)が19曲収められている。そのうち13曲が〈死者のため、とくに埋葬のためのもの〉、他の6曲は〈高位聖職者の教会訪問のためのもの〉で、すべて単旋律のラテン語聖歌である。
用途が特殊であり、音楽的にも複雑な形をとる曲が多いので、一般の信徒が日常口ずさめるような歌ではなかった(正直、面白い曲ではない)。専門的な訓練を受けた聖職者ないし聖歌隊、神学生によって歌われた。ただし、「Tantum ergo Sacramentum」と「Veni Creator Spritus」の二曲は例外で、単純な旋律を、歌詞を変えて複数回歌うものだった。それゆえ日本の一般信徒たちによっても広く歌われた。
*ほかの曲に比べてTantum ergoだけ曲調がとても明るい。あえてこの曲をどちりなきりしたんU・Wにおいて二度も取りあげ、『どちりな』と直接関係のない『こんてむつす むん地』とくっつけた作曲者の意図に興味を覚える。さらに、当時の一般信徒たちが歌ったもう一つの曲「Veni Creator Spritus」が、どちりなきりしたんTに盛り込まれている点も、興味深い。
さらに、これら19曲の旋律は現代の聖歌集に見られないものが多く、16‐17世紀のスペインやポルトガルでのみ歌われたローカルな聖歌だったらしい。
最後に、『サカラメンタ提要』は、日本の西洋音楽の受容が、明治開国期ではなく、室町時代末からのいわゆる〈キリシタンの世紀〉(1549-1650:ザビエルの来日からポルトガル国王ジョアン4世が幕府から最後の文書を受領するまでの期間。西洋における初期近代)だったことを示すものでもある。
※サカラメンタとは:
キリスト教の重要な儀式であるサクラメント(宗派によって秘跡・礼典・機密などと訳される)のことで、神の恩寵を人間に与えるために教会が制定した儀礼のこと。これを受けていない人間は最後の審判で必ず(!)地獄行きになる。カトリック教会では、洗礼、堅信、告解(ゆるし)、聖餐、婚姻、終油、叙階の7つを指し、その正式で公の礼拝式を典礼と呼ぶ(ざっくばらんに言えば冠婚葬祭や盆・正月みたいなもの)。典礼の式次第を示したものを典礼書といい、そのうちの一つに「定式書(Manuale=提要)」がある。
当時、多数の日本人がこの典礼に魅力を感じて教会へ通ったので、日本での典礼に関する何らかの統一された規則を作る必要があったのである。
キリスト教の重要な儀式であるサクラメント(宗派によって秘跡・礼典・機密などと訳される)のことで、神の恩寵を人間に与えるために教会が制定した儀礼のこと。これを受けていない人間は最後の審判で必ず(!)地獄行きになる。カトリック教会では、洗礼、堅信、告解(ゆるし)、聖餐、婚姻、終油、叙階の7つを指し、その正式で公の礼拝式を典礼と呼ぶ(ざっくばらんに言えば冠婚葬祭や盆・正月みたいなもの)。典礼の式次第を示したものを典礼書といい、そのうちの一つに「定式書(Manuale=提要)」がある。
当時、多数の日本人がこの典礼に魅力を感じて教会へ通ったので、日本での典礼に関する何らかの統一された規則を作る必要があったのである。
【参考文献・サイト】
- 高祖敏明「キリシタン版精選 サカラメンタ提要 解説」、『キリシタン版精選 サカラメンタ提要』所収、雄松堂出版、2006年
- H・チースリク「サカラメンタ提要付録 解説」、『キリシタン書 排耶書』日本思想体系25、海老沢有道他校注、岩波書店、1970年、616-9頁。
- 『吉利支丹文學集 上』、新村出、柊源一校註、朝日新聞社、1957年、115-7頁。
- 皆川達夫『CD&DVD版「洋楽渡来考」解説書』、日本キリスト教団出版局、2006年。
- 長崎県西海市HP:http://www.city.saikai.nagasaki.jp/docs/2011030800506/
- 竹井成美「1605年に長崎で出版された典礼書『サカラメンタ提要』に記された楽譜の印刷工程」2005年。http://jairo.nii.ac.jp/0037/00002611
by OMY 2014/08/13 Tweet