男声合唱版
  「日曜日〜ひとりぼっちの祈り〜」

上智大学グリークラブ第31回定期演奏会

児童合唱
「日曜日〜ひとりぼっちの祈り〜」より1.朝

足立区立第14中学校 足立区連合音楽会(昭和58年)

*メモ1
蓬莱泰三と南安雄のコンビの交通事故を題材にした2つの組曲「チコタン」「日曜日」が発表された1970年はまさに、交通事故による死亡者数が戦後最多となっている。

[参考]全日本交通安全協会HPより
交通事故発生状況の推移

*メモ2
蓬莱泰三の言葉にこのようなものもあるらしい。
”いま生きている人の生を意味あるものにするため、どうか安らかに眠らないで下さい。”(「祈り」より)

この歌の主人公の心情とは少しぶれるかもしれないが、祈り続けることが彼にとって救いであるならば、子守唄を歌いながら「眠らないで下さい」と祈るのも頷ける。ソースがはっきりしないので、ひとまずメモ。
これもまた関係ないが、「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」という平和記念公園の慰霊碑に刻まれている言葉とその石碑の前で祈り続ける人びとをなんとなく思い出してしまった。

益楽男〜
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日曜日〜ひとりぼっちの祈り〜 を考える

課題曲M3「おやすみ」

2015年全日本合唱コンクールの課題曲M3の「おやすみ」は、蓬莱泰三作詞・南 安雄作曲の組曲「日曜日〜ひとりぼっちの祈り」の終曲である。全5曲からなるこの組曲は、合唱組曲「チコタン」などで知られる蓬莱泰三による詞が印象的な曲である。脚本家でもある彼らしい、衝撃的な内容である。
1〜4曲目はアカペラ部分も多く、詩をなぞるような旋律で曲が流れていき、聴く者の心にダイレクトに歌詞が響く。そしてクライマックス、ピアノとの協奏曲ともいえるようなこの終曲で交通事故遺児となった子供の心情を描く。

※「チコタン」は、少年が恋心を寄せていた「チコタン」がダンプにひかれて死んでしまった歌。

◆「チコタン」について・蓬莱泰三本人のコメント◆
高度経済成長は結構なことだが、その一方で子供の世界を破壊急ぐようになる。そういう子供たちの代弁をしたいなと。何もかも分かりやすくすると奥行きがなくなる。
(日本テレビ「月曜から夜ふかし」2015.8.31放送より)

 「日曜日〜ひとりぼっちの祈り〜」より 5.おやすみ 

演奏:益楽男グリークラブ
平成27年9月13日第58回埼玉県合唱コンクール


「日曜日〜ひとりぼっちの祈り〜」の歌詞

以下に、歌詞の引用を交えながらこの組曲を紹介したいと思う。
「」内が引用部分である。

1.朝

日曜日の朝、「お父ちゃん はよおきや」「お母ちゃん おけしょうまだか」と両親に無邪気に呼びかける。「どっか 連れてってえな」と両親に甘えてせがみたい年頃。明るい曲調で始まるが、一変して、事故で両親がいなくなってしまった寂しさを歌う。
「やっぱり 日曜日の朝になったら繰り返す ひとりぼっちの ぼくの ひとりごと」


2.街で

ひとりで街に出る。はしるクルマやデパートの雑踏のなかにお父ちゃんとお母ちゃんの面影を探してしまう。わらっている よその子、取り残されてしまった自分。自分だけ人と違う、孤独を歌う。
「なんでそないに ジロジロ見るねん!? おったらいかんのか!?」


3.かえり道

「みんながいっしょにあそんでる かえり道 見て見ぬふりして まわり道」
遊びながらかえる友だち、「ヒトゴロシノコ」と峻烈な言葉を言ってしまえる未熟さは、主人公たちは小学生くらいであろうかと想像させる。ここで、お父ちゃんは飲酒運転で交通事故を起こした加害者であることが歌われる。


4.てがみ

被害者遺児へ手紙を書いている。「はいけい」から始まる手紙はひらがなとカタカナが多く使われている。精一杯に大人びた内容の中に、ひらがなで幼さとカタカナで現実を無理に受け入れようとしている拙さを感じ取れる。
「ぼくがベンショウします」「そやから どうか ぼくのお父ちゃんをかんにんしたげてください」

(すでに死んだ人を許してほしいとはおかしな話。自分にとって唯一無二の存在である両親が、神に許されない存在あるとするなら、自分の存在すら危くなってしまう。事故がなければ両親に守られ自分の存在など疑うことなどない年齢である。お父ちゃんを許してと乞いながら、自分への許しを乞う姿。)


5.おやすみ

天にいる両親に子守唄を歌う。「天国へいかしてもらいや」と祈りのような歌である。「ねんねころいち おやすみなさい」と子守唄を歌いながら、安らぎを求めるように眠りに落ちる主人公。そして、歌の最後は「またあした」で締めくくられる。

※なお詩の全編については、国立国会図書館に所収されている「日曜日〜ひとりぼっちの祈り〜合唱組曲男声合唱版」(出版・日本放送出版協会/1977.1)に掲載されている歌詞の記載を参考とした。



演奏:京都産業大学混声合唱団ニポポ(1990)


蓬莱泰三の思い

蓬莱泰三は、神戸大学混声合唱団アポロンの50回記念演奏会にて、「混声合唱とピアノのための三つのバラード」が初演された際、「合唱には祈りが通底しています。たとえ非宗教的な曲の演奏であっても、隣人の声に耳を澄ませ、こころを一つにして合唱する行為は、祈りの姿そのもののように思えます。」という言葉を寄せている。
(演奏会パンフレットより・資料提供:研究員ナゾノクサ)

蓬莱泰三は作品の中で、なすすべもない怒りや嘆きを合唱曲の歌詞に捧げ祈ることで、昇華させようとしているのではないだろうか。

(文責・でんで)



「おやすみ」研究会

1.おやすみ楽譜情報整理(案)

研究員:KIN
曲想、テンポ、調、強弱を整理する。


2.少年期の心と「おやすみ」の音楽的表現について

研究員:下河原建太
和声解析を得意とするアンサンブルトレーナーが、研究会で熱く語った「おやすみ」の詩の解釈。


3.シェンカー分析と「おやすみ」の和声について (準備中)

研究員:KIN
楽譜を単純化した和声の主和音やドミナント進行に還元して理解する。




「きりん」研究会

自由曲の1曲目で歌う木下牧子作曲の無伴奏男声合唱のための「わたしはカメレオン」より4.きりん についての研究レジュメも、ここで紹介する。


1.きりん楽譜情報整理(案)

研究員:KIN
曲想、テンポ、調、強弱を整理する。


2.「きりん」の和声解析

研究員:下河原建太
アンサンブルトレーナーによる和声解析講義。


3.シェンカー分析と「きりん」の和声について (準備中)

研究員:KIN
楽譜を単純化した和声の主和音やドミナント進行に還元して理解する。


by おやすみ・きりん研究会 2015/09/03 




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