無伴奏男声合唱のための
「カウボーイ・ポップ」より4.ある日
作詞:寺山修司  作曲:信長貴富

演奏:うたう会

無伴奏混声合唱のための
「カウボーイ・ポップ」より5.ヒスイ
作詞:寺山修司  作曲:信長貴富
演奏:東京大学柏葉会合唱団

無伴奏混声合唱のための
「カウボーイ・ポップ」より5.ヒスイ
作詞:寺山修司  作曲:信長貴富
演奏:ジュニアコーラス Raw-Ore

「かなしくなったときは
海を見にゆく  (略)

人生はいつか終わるが
海だけは終わらないのだ  (略)」

寺山修司
「なみだは
にんげんがつくることのできる
一ばん小さな 海です」

寺山修司
「海と書いて、ウミと発音する
ウミはまた、「産み」でもある
そしてしばしば、「倦み」となることもある。(後略)」

寺山修司
「私の書く詩のなかには
いつも家がある

だが私は
ほんとは家なき子

私の書く詩のなかには
いつも女がいる

だが私は
ほんとうは思い出がきらいなのだ
(略)

私は
だまって海を見ている」

寺山修司
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【特集】信長貴富作曲「カウボーイ・ポップ」を考える

信長貴富作曲「カウボーイ・ポップ」とは

信長貴富が寺山修司の詩をテキストとして扱ったのは、このカウボーイ・ポップが3作目である。

「・・・”カウボーイ・ポップ”は、前二作とはコンセプトをガラリと変えてみた。修司の虚構世界にうたで遊んでみようと考えたのである。しかし、修司独特のトリッキーなレトリックゆえ、虚構は単なるメルヘンにとどまっていない。見え隠れする真実を掬い取ることもまた、作曲のてがかりとなっている。」(作曲者まえがきより)

  1. カウボーイ・ポップ
  2. 人さし指秘抄
  3. 猫はねむる 火のそばで
  4. ある日
  5. ヒスイ

・無伴奏混声合唱のための「カウボーイ・ポップ」2004年 初演:合唱団LINC
・無伴奏男声合唱のための「カウボーイ・ポップ」2005年 初演:早稲田大学グリークラブ


平成27年6月13日第60回埼玉県合唱祭  指揮:吉岡理/演奏:益楽男グリークラブ


ある日・ヒスイ研究会の発足

益楽男の活動の中でも名物となりつつある研究会の第4弾!
研究会は都内のとある会議室にて、研究員がそれぞれ発表レジュメを持ち寄り、録音機をセッティング、板書も飛び出して大真面目に行われます。そのあとは、夜の部でつづきを語り合うという益楽男ならではの活動です。
過去活動実績→ 「「どちりな研究会part1」、「どちりな研究会part2」、「ローセキ研究会

以下に、研究員のレジュメを紹介しよう。


1.寺山修司の「見せ方」

研究員:小池由幸
短歌・俳句・詩・随筆・評論・戯作・作詞など多岐にわたる文筆活動に加え、 映画監督・写真家としても活動する寺山修司。その作品は多層的多面的にテーマを描いていく。


2.寺山修司の詩について

研究員:史吟
「ある日」の詩について、劇作家・別所実の解説を紹介し、寺山修司の詩について考える。


3.詩の音楽化について(ある日・ヒスイ)

研究員:KIN
「詩に対して作曲家がどう感じ、どのように音楽作品という形の表現にしていったか」という点に迫るための分析枠組の模索を試みる。
そのために歴史上の作曲家たちが用いた方法を振り返りつつ、「ある日」、「ヒスイ」の理解・分析のために使用する。


4.ある日・ヒスイ解説

研究員:吉岡理
2015年6月13日、第60回埼玉県合唱祭で「ある日」「ヒスイ」の指揮をする吉岡理氏の曲分析。


5.ヒスイ 楽曲構造分析(テンポ・リズム・強弱)

研究員:KIN
信長貴富作曲「カウボーイ・ポップ」より5.ヒスイの曲の構造を特にテンポやリズム、強弱に注目し、曲の構造を明らかにする。


[参考] 詩と押韻について

研究員:KIN
ローセキ研究会の中で、「ある日」の詩の押韻や今様形式について触れられている。
(レジュメPDFの7頁を参照)



「ある日」と「ヒスイ」

「ある日」について信長貴富は曲集のまえがきにこう書いている。
「母、本、海、旅、恋・・・5曲の中で、この詩は等身大の修司像に最も近い。抱えている孤独を優しい子守唄で包み込むような淡い緩徐楽章」と。

寺山修司は海や宝石や愛をモチーフにした詩を多く書いているので、いくつか紹介したいと思う。

十九歳

五歳の時
わたしは宝石を失くした

十歳の時
わたしは宝石が何であるかを知った

(略)

十九歳の時
わたしは愛という名の宝石を手に入れた

だが
それはわたしの失くした宝石ではない

(略)


贈り物

思い出を売って
宝石を一つ買った

思い出を買いもどすため
宝石を売った

宝石を買いもどすため
また
思い出を売った

(略)

だんだん古びてよごれてゆく
思い出の中の恋と
だんだん
新しい艶を出してくる宝石の
あいだで
少女は
ぼんやりと立っていた

(略)


あなたに

書物のなかに海がある
心はいつも航海をゆるされる

書物のなかに草原がある
心はいつも旅情をたしかめる

(略)

だがもう一度
やり直すために
書物のなかの家路を帰る

書物は
家なき子の家


消す

(略)

ところで 消された愛は存在しなかったかといえば
そうではありません
消された愛だけが 思い出になるのです


「寺山修司少女詩集」より

「ある日」の詩の中で、母、本、海、旅、恋・・・そして、「恋のない子に何がある?」と問い続ける寺山修司。
何かを手に入れるために思い出を失い、そしてまた、思い出を追いつづける。
思い出の中にしか存在できなかった愛は、まばゆい宝石のようなものだったのかもしれません。

悲しみは遠い海へ。
ヒスイはきみのてのひらに。  (でんで)


ヒスイ jade

信長貴富が自ら編曲したというこのバージョン。
益楽男の間では、オペラ歌手が歌うマッチョなヒスイと話題でした。
青年の誠実な告白を、目まぐるしく変化する調と鮮烈なメロディーで、若々しくロマンティックに歌い上げるヒスイのイメージとは、ひと味違いますね(^^)

二期会オペラ歌手ユニットThe JADEのためのザ・ジェイド・ヴァージョン

今も根強い人気の詩人・芸術家、寺山修司が遺した詩「ヒスイ jade」。ザ・ジェイドのグループ名でもある“翡翠(ヒスイ)”をモチーフとした詩を、信長貴富が作曲。すでに合唱曲として人気の曲を信長自身がザ・ジェイドのために新たに編曲した“ザ・ジェイド・ヴァージョン”です。アルバムのラストを締めくくるかのように、最後にクライマックスを迎えます。
ザ・ジェイド セカンドアルバム『リヴァイブ』

by ある日・ヒスイ研究会 2015/06/10 





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