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Vol.5-2 ベルカント唱法―合宿ボイトレ講義(前編)

9月22〜23日の合宿でボイトレの先生から、目から鱗の発声法を教わりました。
それがベルカント唱法とアレクサンダーテクニックです。
これらは益楽男が飛躍する上での基盤となり、鍵を握るものだと思っています。

ちなみに自分は両方とも名前を知っていましたが、中身は疎いままでした。
ここで知っている人も知らない人も、どんなものなのか見てみましょう。

まず前編として、ベルカント唱法を話していきたいと思います。


ベルカント唱法

【bel canto】<ベルカント>はイタリア語で『美しい歌』という意味。イタリアの伝統的な歌唱法で、喉に無理なく低音から高音まで、気持ちよくのびやかに歌える方法です。

日本では、体をカチッと歌うドイツ唱法が主流になっています。

ドイツ唱法は息を吐いた後の横隔膜の状態を保ちながら、横隔膜の全面(下腹)に力を入れ、硬く支えて発声します。ドイツ語は子音が多く母音が繋がりにくいので、口腔内で発音を行います。

一方のベルカント唱法は、下腹部を徐々に押し上げながら、横隔膜を上にあげていきます。併せて、横隔膜の後ろの面(腰)を徐々に下げて支えていきます。この時体には余計な力が入っておらず、横隔膜は止まることなくリラックスして動いています。
イタリア語は子音を素早く発音し、母音は鼻腔を使って発声をします。こうすると母音が変わっても、喉は同じ状態を保たれます。
つまり母音が同じ音色、同じ位置で繋がり、スムーズに発音が出来るのです。


こう見ると、それぞれ体の使い方が全然違いますよね。実際ドイツ唱法で歌うと、高音が出にくかったり、レガートに歌えなくなったりと色々な弊害が出てきます。
それでも日本はまだベルカント唱法が浸透してないのが事実です。

ここでベルカント唱法の特徴と、体の使い方を述べていきたいと思います。


自分の声が聴こえない。

決して自分の中で響かせずに発声します。自分に聴こえていると、それは喉声です。
「体が楽器」とよく言われますが、自分の体そのものを鳴らすのではなく、息を流して鳴らします。リコーダーもリコーダーそのものが鳴るわけではなく、息を流して初めて鳴りますよね。それと同じです。

自分に聴こえる発声は、確かに気持ちよく酔いしれながら歌えるかもしれません。けれどもそれは、聞き手にとっては聞き苦しいものとなります。
逆に自分では聴こえるか聴こえないかよく分からず、「この声でいいのかなぁ?」と思う声の方がベストなのです。変な癖もなく、ナチュラルに聴こえてきます。合唱で調和しやすい声ですよね。



低音から高音まで癖なく、豊かな音色でスムーズに歌う。

「高音は上に突き抜けるように」「低音は胸に落として」というのはよく言われますよね。けどベルカント唱法は音によってポジションを変えず、あくまで一定の位置で発声を行います。

高音、低音の出し方はこのようなイメージを持たれる人が多いと思います。





人それぞれ違うとは思いますが、少なくとも私はこのイメージで歌っていました。

ベルカント唱法では常にこのようなイメージを持ちます。



どんな音でも一定の位置で歌う、これが ベルカント唱法 です。

ここで大事なのは、舌の位置、口の扱い方。
舌は動かさず、常に前歯の裏につけること。歌っている間に舌が動いていたら、それは力が入っている証拠です。
口の扱い方も大切。母音によって口の形が変わっても、それに呼応して言葉を喋らないようにします。表情筋を使って顔・鼻腔(マスケラ)に響きを集め、口は使わずに発声します。

あくまで舌は存在しないものだと思い、口は息を流す通過点だと考えることが大切です。
そうイメージすると口周りの余計な力が抜け、息が流しやすいと思います。

あ、一定の位置で歌うと言っても、当然音によって息の流れやスピードは変えていきますよ。胸郭を広げ、横隔膜を自由に動かしましょう。



ただ、歌っていくにつれ、当然歌いにくい音が出てきます。「この音からは出しにくい」という境目が、人それぞれあるかと思います。合唱曲によって出しにくい音というのも変わってきますよね。

この歌いにくい音、抜けにくい音のことをパッサージョと言います。ここに来ると、一定のポジションだけ目掛けて歌うのが難しくなってきます。
このパッサージョの処理の仕方が、ベルカント唱法では大切です。

ではどうすればよいか?
ここでいつも以上に息を後ろから回し、ポジションを変えます。



要はパッサージョで体の使い方、ポジションを変えることが大切です。いつもと同じ歌い方では、パッサージョを上手く処理できません。
併せて、いつも以上におなか(下腹部)を徐々に押し上げながら、腰の重心を下げていきます。
顎を下げるのも忘れずに。

これがパッサージョの処理です。
上手くいけばフレーズをなめらかに歌うことが出来ます。

高音を歌う場面で「あー高い音だ、大変だけど頑張って出そう」と見上げながら出すのではなく、「こういう風に体を使おう」「ここを開いて、息の流れ、スピードはこうしよう」と考えながら出していきます。
パッサージョが出てきた場合、その都度体の使い方を考えながら発声するのが重要です。


以上ざっくりではありますが、これがベルカント唱法の概要です。私自身この唱法を知り、新たな発見や驚きが沢山ありました。
今後これを実践していけば、発声が見違えるほど変わっていくと思います。

後編ではアレクサンダーテクニックについて述べていきたいと思います。お楽しみに!


by 抹茶 2013/10/02 19:00 




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